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2021.06.30

SSSチーム対談:マッシュ・ウォルドマンさん(スペシャルアドバイザー)/田坂克郎(リーダー)

Shibuya Startup Support(SSS)には、多様な立場からスペシャルアドバイザーが集い、スタートアップ支援のためのさまざまな知見を提供してくださっています。そのひとり、慶應義塾大学大学院メディアデザイン学科(KMD)教授のマッシュ・ウォルドマンさんと、渋谷区職員でSSSリーダーの田坂克郎の2人に、マッシュさんがSSSに参画した経緯、渋谷という街について、そして外国からスタートアップが来たくなるような街づくりのヒントについてお話を伺いました。

マッシュさんの渋谷区との関わり

– マッシュさん、自己紹介をお願いします。

マッシュ・ウォルドマン(以下、マッシュ):マッシュです。慶應義塾大学大学院メディアデザイン学科(KMD)の研究室で、「サーキュラーデザイン」と「イノベーションデザイン」をメインテーマに東京をベースに活動しています。大学での授業のテーマは「ブランドドリブンデザイン」で、これは企業のミッションを軸に、デザインをそのプロセスから構築するという考え方です。
もともと私は、ニューヨークやロンドンを拠点にしたデザイナー兼アントレプレナーで、90年代にインタラクションデザイナーとしてキャリアをスタートしました。その後インターフェイスデザインを物理的なカタチ、プロダクトに落とし込んだらどうなるかという試みで「Nooka」という時計を作りました。これが有名になって、事業としても成功したんですね。デザイン指向のアントレプレナーシップの先駆けだと思っています。このプロダクトは日本でも結構人気があって、売上も立っていたので千駄ヶ谷(後に南青山)にオフィスを開いたんですよ。もっとも、東京との縁はその前からあって、電通でインターンもしてました。1990年にニューヨークに戻り、2017年にまた日本に戻ってきたというわけです。

-マッシュさんは、渋谷という街にどんなイメージを持っていますか?

マッシュ:渋谷は大好きです。実は住みたいと思っているんですが、いい物件がまだ見つかっていないんです。とくに、神宮とか裏原宿のあたりがすごく好きで。いい飲み屋があるんですよ。クリエイターが飲みに行くなら銀座とかではなくて渋谷になりますよね。それからデザイン文化の歴史もある。60年代の東京オリンピックの頃の建築、例えば丹下健三の代々木国立競技場だったり、メタボリズム建築だったり。私は日本に来る前から日本のデザイン文化に興味を持っていました。だから渋谷は特に好きな街なんです。

渋谷区のスタートアップ支援事業について

– そういう意味で、渋谷区が去年スタートアップ支援事業を始めると聞いたとき、どう思いましたか?

マッシュ:渋谷が外国人にとって住みやすい街になるなら大歓迎だと思いましたね。私は日本語を話せるし、こちらの生活も苦にならないから住みやすいんですが、言葉を話せなかったり慣習的な障壁のせいですごく住みにくいと思われているようです。居住ビザもそうですが、現状だとアパートの契約とか、すごく難しいんですよ。
SSSに参画したのも、そういった壁から海外スタートアップの資金調達の難しさまで、外国人起業家が直面している問題を解決するという渋谷区のミッションに興味があったからです。

イノベーションが起きる必要十分条件

– 田坂さんは、どんな期待を持ってマッシュさんにお声がけされたのですか?

田坂克郎(以下、田坂):彼の研究テーマがイノベーションなので、イノベーションが起こる街をつくるにはどうしたらいいか、アドバイスが受けられると思ったからですね。

マッシュ:イノベーションリサーチでは、例えばニューヨークと東京を比較して、東京に何が足りないのかを探ったりします。画家の村上隆も、パフォーマーのオノ・ヨーコもそうですが、才能あるイノベーターたちがことごとく、日本で評価される前に外国で先に有名になる、なぜ?ということですね。この領域の研究では、街でイノベーションが起きるには、ダイバーシティが重要であることがわかっています。日本という国とその都市には、特有の法律や慣習や文化的障壁でダイバーシティが阻害されているので、日本に優秀な才能を招きたくても来ないんです。
イノベーションの起こりやすさって、例えば都市ごとのクラブイベントの実施状況や頻度を比較することで「見える化」することができます。ジェンダーダイバーシティやジェンダー平等性も然り。私はそういったことを国際比較し、イノベーティブなコミュニティが成立するための必要十分条件とはどういうものなのかを探る研究をしています。

田坂:私個人もサンフランシスコで暮らしていたことがあるので、さまざまな障壁や環境がイノベーションに影響するということは実感できます。なので、そういった研究をされているマッシュさんからぜひアドバイスをいただきたいと思っています。

マッシュ:重要なのはダイバーシティなんですよ。それには多様なアートに触れるといったことも含まれます。他の国際都市に比べて東京の美術館は数こそ多いですが、お客との距離が遠く感じます。また、常設作品、アクセスの面を考慮すると充実しているとはいえないし、なにより入館料が高いですよね。ニューヨークのメトロポリタン美術館は、自分が払えるだけのお金を払えば誰でも入れます。そういったところは行政の力でサポートできるはずです。

田坂:渋谷区でも、ダイバーシティ推進の一環として、アート戦略的なところをもっと推進していきたいですね。最近では民間でも渋谷のテック系の企業がアートを購入したり、展示するという動きがあり、刺激を受けます。

– 海外スタートアップが来たくなるような街とは?

マッシュ:渋谷区のダイバーシティというところで言えば、やはり海外スタートアップがもっと増えるべきだと思います。ところが、世界銀行が毎年公表している「Ease of doing business(ビジネス環境改善指数)」という、国ごとの起業のしやすさのランキングの最新版だと、日本はまだ29位。これを改善していきたいですね。外国人が起業しやすくなれば、日本人にだってもっと起業がしやすくなるはずですから。

– 海外の起業家を惹きつけられるような渋谷の魅力とは何でしょうか?

マッシュ:東京は、ニューヨーク・ロンドンに並ぶような大都市だし、日本の中では比較的ダイバーシティを感じられる街で、なかでも渋谷にはいいレストランやバーやクラブがあって刺激的です。もちろんファッションもある。一方で公園もあって、ニューヨークのブルックリンのようなイメージですね。

田坂:ブルックリンというのは意外でしたがオシャレな感じでいいですね。自分個人としては、渋谷と似ている街はなかなか無いと思ってましたから。たしかに、日本の他の街よりアートとかDJ・クラブ文化、それからファッションの色は濃いかもしれません。

– 海外からどんなスタートアップに来てもらいたいですか?

マッシュ:デザイナーや、デザイン思考によって社会を良くするような、未来志向のサービスやプロダクトを持っているスタートアップですね。例えばニューヨークにはModern Meadowという、幹細胞を培養して動物を傷つけずに皮革素材を製造する会社があります。日本にもSpiber株式会社という、蜘蛛の遺伝子からの素材で繊維を製造する会社をはじめ、ノウハウを持っている企業が結構あって、その中でも商品化されていないアイデアが数多くあるんです。

田坂:サンフランシスコにもMeatableという人工肉のベンチャーがあります。そういった会社が渋谷を活躍の舞台に選んでくれたら嬉しいですね。渋谷区ではスタートアップビザの発給も始めたので、これをきっかけにダイバーシティをさらに推進していきたいと思ってます。やることは山積みですが、マッシュさんをはじめ特別アドバイザーの皆さんの力をお借りしながら、チームで取り組んでいきます。

マッシュ:これからご一緒できることを楽しみにしています。

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